[NBA]異質なセンター ニコラ・ヨキッチ

  • 2021.02.06
  • NBA
[NBA]異質なセンター ニコラ・ヨキッチ

リーグナンバーワンセンターの呼び声も高いデンバー・ナゲッツの大黒柱ニコラ・ヨキッチ。NBA史上、類を見ないプレースタイルを持つニコラ・ヨキッチについて簡単にまとめてみた。

■ 生い立ち

ヨキッチは1995年2月19日にセルビアのソンボルで生まれる。4歳の頃にコソボ紛争に巻き込まれ北大西洋条約機構NATOによる爆撃も経験。爆撃を受けた数か月の間、爆撃から逃れるため暗闇の中での生活を強いられるもヨキッチと家族は幸運にも生還を果たした。数千人もの死者を出したこの紛争の経験が、もしかしたらヨキッチの謙虚で優しい性格に結びついているのか知れない。

その後、2人の兄の影響でバスケットボールを始める。バスケットボールだけでなく、サッカーや水球など様々なスポーツを経験した。ヨキッチにとってスポーツは遊びであり、バスケットボールもまたそうだった。そういった遊びの感覚がヨキッチの現在のパスセンス含めたプレースタイルに大きな影響を与えたと感じる。スポーツは遊びであったため、練習後に欠かさずにコーラを約3リットルも飲んでいたらしい。また、ジャンクフードも大好きであり典型的な肥満体型だったヨキッチ。それでも恵まれた身長とポテンシャルが認められ始め2012年にセルビアのプロチームと契約した。プロになり体もある程度絞ったヨキッチは、徐々にゲームメイクができるポイントセンターとしてチームの中心選手として成長していく。通常のセンターであれば、ゴール付近での力強いプレーやリバウンドにフォーカスするが、ヨキッチの当時から好きなプレーはフリースローライン付近から味方に捌くパスだった。ヨキッチは過去にインタビューでこう答えている「得点して喜ぶのは一人だけど、パスをすれば喜ぶのは2人になるんだ。」そういったセンターとして異色のプレースタイルを持ったヨキッチは、運良くNBAのスカウトの目に止まり、NBAから認知され始めた。

■ NBA加入から現在まで

そして2014年のNBAドラフト、2巡目全体41位でデンバー・ナゲッツから指名を受ける。自身でもドラフトされるレベルではないと思っていたヨキッチは、翌シーズンからヨーロッパの名門バルセロナのオファーを受けるつもりいた。しかし、バルセロナはヨキッチの肥満がちな体型やセンターとしての筋肉量の少なさに抵抗を示し、直前に契約を破棄。ドラフト後の1年間は、当時在籍していた母国セルビアのメガレックスに留まることになった。その後ナゲッツのアシスタントGM(当時)で欧州バスケ界のレジェンド、アルトゥラス・カルニショバスから説得を受け2015年からNBAでプレーすることを決意する。しかし当時のチームメイトたちはヨキッチのNBA選手しからぬ体型を見てNBAで成功するとは感じなかったそうだ。カルニショバスだけがニコラヨキッチのポテンシャルを見抜いていたのである。

ルーキーシーズンこそ平凡に終わったものの、2年目の2016-2017シーズン途中からスタメンセンターとして固定された。ヨキッチがスタメンに固定される前は、チーム成績は振るわなかったが固定された後はプレーオフまであと一歩のとこまでチームを引っ張った。この活躍もありナゲッツは、ヨキッチを中心にチームを作っていくことを本格的に決意した。

NBA3年目の2017-2018シーズン、ヨキッチは平均18.5得点、10.7リバウンド、6.1アシストを残し、さらにシーズン途中のミルウォーキー・バックス戦で試合開始から僅か22分6秒でトリプルダブルを達成とNBA最速記録も樹立した。個人としては大きく飛躍したシーズンとなったが、レギュラーシーズン最終戦となったミネソタ・ティンバーウルブズ戦、勝利した方がプレーオフ進出、負けた方はシーズン終了という大一番の直接対決で延長の末、敗戦。チームとしては悔しい思いを味わった。それでもヨキッチとチームは順調に成長を見せファンにとって今後に期待を持たせてくれるシーズンとなった。

期待された4年目の2018-2019シーズン、平均20.1得点、10.8リバウンド、7.3アシストを記録し、初のNBAオールスターに選出、遂にスーパースターの仲間入りを果たした。チームもウエスト2位で5シーズン振りにプレーオフに進出、ヨキッチにとって初のプレーオフとなった。そのプレーオフでカンファレンスセミファイナルでトレイルブレイザーズに敗退するが、概ね期待通りのシーズンとなった。

2019-2020シーズンに入ると、他のチームもヨキッチとナゲッツを警戒し始め、新型コロナウイルスでリーグが中断するまで思うように飛躍する形とはならなかった。それでもヨキッチは平均19.9得点、9.7リバウンド、7.0アシストを残し2年連続でオールスターに選出された。リーグ中断期間でヨキッチはかなり体を絞り再開後のシーディングゲームから軽快なステップやドライブなどプレーの幅を広げて見せた。2年連続でプレーオフに進出したナゲッツは2度、1勝3敗からの逆転劇で苦戦しながらも11年振りのカンファレンスファイナルまで進出しチーム力の高さを見せつけた。

このようにヨキッチとナゲッツは、この5年間で毎年のように飛躍を遂げてきた。ヨキッチだけなく他の主力メンバーもほぼ生え抜きの選手たちで構成されているナゲッツの全員バスケは、見ていて非常に楽しく一気に将来が楽しみなチームへと変貌を遂げたのである。

NBAでの過去5年のハイライト
ヨキッチのアシスト集

■ 今シーズンのナゲッツとヨキッチ

2020-2021シーズン、昨年絞った体型をキープしているヨキッチはここまで(2021/2/5現在)平均26.1得点、11.7リバウンド、8.4アシストを記録している。2/1のジャズ戦でキャリアハイの47点を奪い今シーズン好調が続くジャズの連勝をストップさせた。また、12月、1月の月間MVPにも選出され、平均アシストはセンターながらリーグ5位と脅威的なスタッツで個人としてキャリア最高のシーズンを送っている。

しかし、チームはここまで勝ったり負けたりを繰り返し、昨年カンファレンスファイナルまで行ったチームとしては、非常に物足りないシーズンとなっている。オフの補強が上手く行かず、ディフェンスの酷さとヨキッチ以外に安定して得点を奪える選手の不在が大きな要因だ。マレーとマイケルポータージュニアは好不調の波が激しくヨキッチの相棒としては物足りない。また、ヨキッチ自身も弱点である身体能力の低さからディフェンスで相手に対応できていなかったり、良いパスを狙いすぎるせいか不用意なターンオーバーから相手に流れを渡してしまっている場面が目立つ。チームの勝敗を左右する大黒柱ならば、もう少し堅実で慎重になる必要がある。このままナゲッツとヨキッチの弱点を補うような補強や戦術・采配がなければ、これ以上のナゲッツの成長は期待できなくなってしまうかもしれない。今後のマローンHCの采配とナゲッツの動向に注目したい。